移動平均線とは
移動平均線(Moving Average)とは、一定期間の終値の平均値を平滑化しグラフにした線です。FXにおける移動平均線は、価格チャートに重ねて表示し利用します。
価格推移のチャートだけでは分からない売買指標も、移動平均線を追加で表示させることで、上昇・下降・停滞などのトレンドを判断することが可能になります。
移動平均線の見方
上記チャートのオレンジ色の線が移動平均線です。(線の色は自由に変更可能)
移動平均線が上向きになっていると上昇トレンドとなり、移動平均線が下向きだと下降トレンドとなります。上記チャートからも移動平均線を表示させることにより、下降トレンドと上昇トレンドが明確に分かるようになります。
また、移動平均線は、価格の抵抗線や支持線としても利用されます。
上記チャートでも移動平均線に価格が接触したところで反発や反落しているのが分かります。
移動平均線を使う理由
移動平均線を使う理由としては、主に3つが挙げられます。
- 相場の強弱を判断する為
- トレンド転換のポイントを判断する為
- 価格の反発や反落箇所を判断する為
移動平均線を表示しないチャートは、ある程度のトレンドは目視で確認できても、価格がどのポイントで反発や反落するのかまでは分かりません。
しかし、移動平均線をチャートに表示することにより、相場の強弱が確認できるとともに価格の反発や反落のポイント、トレンド転換が分かりやすくなります。
移動平均線の使い方
移動平均線は、基本的に「短期移動平均線」と「長期移動平均線」の2つを表示させ、その2つの交差ポイントで売買を判断するのが最も有名で一般的な使い方です。
- 買いシグナル
- 短期移動平均線が長期移動平均線を下から上へ突き抜ける
-
=ゴールデンクロス(GC)
- 売りシグナル
- 短期移動平均線が長期移動平均線を上から下へ突き抜ける
-
=デッドクロス(DC)
グランビルの法則
移動平均線を活用した「グランビルの法則」というテクニカル分析があります。
グランビルの法則は、1960年代にウォール街の通信社の記者だった「ジョゼフ・E・グランビル氏」が、移動平均線を株価に応用することで考案されました。
グランビルの法則は、合計8つの項目に分け売買の判断をするものです。
買いシグナル
下記A~Dの4項目が買いの目安となります。
- 移動平均線が上昇に転じ、価格が移動平均線を下から上へ突き抜ける
- 価格が移動平均線を下回っても、移動平均線が上昇している
- 上昇中の移動平均線に近づいてきても、移動平均線を下回ることなく再び上昇
- 下向きの移動平均線から価格が大きくかけ離れて下落(乖離率が高い)
売りシグナル
下記E~Hの4項目が売りの目安となります。
- 移動平均線が下落に転じ、価格が移動平均線を上から下へ突き抜ける
- 価格が移動平均線を上回っても、移動平均線が下降している
- 下降中の移動平均線に近づいてきても、移動平均線を上回ることなく再び下落
- 上向きの移動平均線から価格が大きくかけ離れて上昇(乖離率が高い)
移動平均線の弱点
移動平均線は、相場の上昇・下降・停滞などのトレンドを判断するテクニカル指標ですが、売買シグナルから一時的に逆方向へ行く「ダマシ」が出やすい弱点もあります。
上記チャートでは、緑丸の箇所が移動平均線が支持線として正常に機能しているのに対し、赤丸の箇所はダマシが発生しました。
機関投資家などプロ集団が、一般投資家のストップロスを狙い市場からお金を巻き上げる為に、ダマシが発生する理由と言われています。
移動平均線の弱点を補う方法
移動平均線の弱点であるダマシを補う方法はいくつかありますが、主に下記の3点が多く使われています。
- 移動平均線を、異なる期間で複数表示する
- MACDなどのオシレーター系インジケーターを追加で表示する
-
エンベロープなどのトレンド系インジケーターを追加で表示する
複数の移動平均線を組み合わせた例
上記チャートは、3つの移動平均線(25EMA、75EMA、200EMA)を同時に表示したチャート例です。
赤丸のダマシのポイントでも、他の移動平均線を下向きのままで、75EMAと200EMAの移動平均線に価格が接触して反落しているのが分かります。
複数の移動平均線を表示させることで、ダマシのポイントをある程度回避することができます。
また、MACDやエンベロープなどの他のテクニカル指標も同時に表示させることで、より細かくダマシのポイントを回避することもできます。
移動平均線の設定
移動平均線をチャートへ表示する際は、最低限下記2箇所の設定をします。
- 期間: 希望の数値を入力
- 移動平均の種別: プルダウンから選択
その他の「表示移動」「適用価格」「スタイル」については、デフォルト(標準設定)のままでOKです。色を変更したい際は、「スタイル」からご希望の色を設定します。
「期間」と「種別」については、下記の項目でご紹介します。
移動平均線の「期間」
移動平均線の期間とは?
移動平均線の期間(数値)は、ローソク足の本数を意味しています。「移動平均線の期間=ローソク足の本数」で計算されるので、チャートの時間足により期間が異なります。
- (例)移動平均線の期間を20本に設定した場合
- 月足=20ヶ月分
- 週足=20週分
- 日足=20日分
- 4時間足=80時間分
- 1時間足=20時間分
- 15分足=5時間分
- 1分足=20分分
移動平均線の期間の数値について
時間足毎の移動平均線の期間数値の目安設定は、下記の表の通りです。
時間足 | 移動平均線の期間 |
---|---|
15分足 | 4、8、12、16、20、24、48、64、96など |
1時間足 | 4、8、12、24、36、48、72、96、120など |
日足 | 5日、10日、20日、21日、25日、50日、75日、100日、200日など |
週足 | 13週、26週、52週など |
月足 | 12ヶ月、24ヶ月、60ヶ月など |
各時間足における期間(数値)の考え方としては、キリが良い数値が使われることが多いという点です。
- 15分足で4本の期間の場合は、1時間分の移動平均線が表示されます。
- 1時間足で24本の期間の場合は、1日分の移動平均線が表示されます。
- 日足で、5本の期間の場合は、5日分(1週間分)の移動平均線が表示されます。
移動平均線「期間」はどの数値が良い?
期間についても特に決まりはなく自由です。
時間足毎によく使われる数値は上記の表の通りですが、一般的には時間足に関係なく下記の数値が多く使われる傾向があります。
- 短期移動平均線: 5、8、12など
- 中期移動平均線: 20、25、75など
- 長期移動平均線: 100、200など
数値が小さい方が、短期移動平均線となり、大きくなるにつれ中期移動平均線、長期移動平均線となります。
移動平均線の「種別」
一言に「移動平均線」と言っても4種類あり、同じ期間設定でも表示したときの移動平均線の動きがそれぞれ少しずつ異なります。
- 単純移動平均線(MA):MT4の表記は「Simple」
- 指数移動平均線(EMA):MT4の表記は「Exponential」
- 平滑移動平均線(SMMA):MT4の表記は「Smoothed」
- 加重移動平均線(WMA):MT4の表記は「LinearWeighted」
単純移動平均線(MA又はSMA)
単純移動平均線は、過去の一定期間における終値の平均値で算出されています。
例えば、日足チャートにおける21MAであれば、過去21日分の終値の平均値がチャートに表示されます。
SMA = SUM (CLOSE (i), N) / N
- SUM = 合計
- CLOSE (i) = 現期間の終値
- N = 計算に使われる期間の数
- メリット
-
長期的なトレンドの方向性が分かりやすい
- デメリット
- 直近の値動きによる平均線の反応が遅い
指数移動平均線(EMA)
指数移動平均線は、過去の一定期間における終値の平均値に平滑化定数を掛けて算出されています。
価格の動きに遅れを取る単純移動平均線の問題を解決する為に考え出された移動平均線です。
EMA = (CLOSE (i) * P) + (EMA (i -1) * (1 – P))
- CLOSE (i) = 現期間の終値
- EMA (i -1) = 1つ前の期間の移動平均の値
- P = 価格の値を使用するパーセント
- メリット
-
単純移動平均線よりも直近の値動きに早く反応
- デメリット
- 大きな為替変動や横ばいの相場の時は、ダマシが多い
平滑移動平均線(SMMA)
平滑移動平均線は、EMAを改良した移動平均線でSMAやEMAよりもなめらかな平均線になります。
単純移動平均線よりも長期的なトレンドを見るのに役立ちます。
SMMA = (SMMA (i -1) * (N -1) + CLOSE (i)) / N
- SMMA (i-1) = 1つ前の足の平滑移動平均
- N = 平滑化期間
- CLOSE (i) = 終値
- メリット
-
SMAよりも長期的なトレンドの方向性が分かりやすい
- デメリット
- 直近の値動きによる平均線の反応が遅い
加重移動平均線(WMA)
加重移動平均線は、指数移動平均線よりも直近の価格を重視した移動平均線です。
期間毎に各終値を掛け合わせて計算され、直近価格のデータが一番大きくなります。
LWMA = SUM (CLOSE (i) * i, N) / SUM (i, N)
- SUM = 合計
- CLOSE(i) = 終値
- SUM (i, N) = 重み係数の合計
- N = 平滑化期間
- メリット
-
直近の値動きを重視しているので平均線の中でも最も反応が早い
- デメリット
- 平均線の中でも一番ダマシが多い
どの移動平均線「種別」を使うのが良い?
どれを使っても問題ないですが、世界的には「EMA(指数移動平均線)」が最も多く使われています。(日本国内に限ると、単純移動平均線が多く使われています)
単純移動平均線よりも直近の値動きに早く反応する為、短期売買をするときは売買のタイミングを逃すことが少なくなる為です。
上記チャートは、単純移動平均線(MA)と指数移動平均線(EMA)を表示させています。
2つの移動平均線の動きは若干異なるだけですが、緑色の平滑移動平均線(EMA)の方が早く価格に反応して動いているのが分かります。
移動平均線の設定まとめ
- 期間
-
5、8、12、20、25、75、100、200
- 種別
-
指数移動平均線(EMA):MT4の表記は「Exponential」
上記は、世界で一般的に使われている移動平均線の設定値ですが、トレードスタイルに合わせて自由に変更できます。
移動平均線をMT4/MT5へ表示するには?
取引プラットフォームのMT4/MT5には、標準で移動平均線(Moving Average)が備わっています。
移動平均線をMT4/MT5へ表示するには、画面左側の「ナビゲーター」から「インディケータ」→「トレンド」→「Moving Average」を選択し、表示させたいチャートへドラッグ・アンド・ドロップするだけと簡単です。
上記操作を繰り返し、移動平均線のパラメーターで期間と種別を設定することで、一つのチャートへ複数の移動平均線を表示できます。
もちろん、移動平均線だけではなく他のインディケータも一つのチャートへ複数表示させることも可能です。
一言に移動平均線といっても設定値によって表示も異なるので、色々とデモ口座で試してみて、どういう相場状況の時にどの期間の移動平均線がハマるか、自分のトレードスタイルにどの期間が合っているかなどを確かめてみるのも良いでしょう。